(番外編3) 盲学校の体育
はじめに
視覚に障害があると、周囲が安全を考慮したり本人の不安感が先に立ったりして、ややもすると運動が少なくなりがちですが、健康な成長のためには、十分な配慮の上で、積極的に運動に取り組むことが必要です。盲学校では、視覚障害に配慮しつつ、できるだけいろいろなスポーツを経験させる中で、バランスの取れた健康な心身の成長につながるよう、体育指導に取り組んでいます。
【体力テスト】
小・中・高各学部では、1学期に体力テストを実施しています。種目は握力、上体起こし、長座体前屈、20mシャトルラン(中・高等部は女子1000m女子・男子1500m走との選択)、50m走、立ち幅跳び、・ボール投げの7種目で、これは、東京都の統一テストと共通の内容です。
どの種目も時間を掛けてスモールステップで練習した上で、測定を行います。行います。特に盲児は、体の使い方が分からないことが多いので、少しずつ取り出して体の動かし方を身に付けます。
【陸上】
短距離走では、全盲の児童・生徒においては、音源走という形で実施しています。メガホンから出る音に向かって走る短距離走です。走路の周辺には十分空間をとり、またゴール付近では、ゴールしたことを確実に声で伝え、安心して全力で走れるよう配慮しています。弱視の方の場合は、その人の状況によって一人で走ることも可能ですし、伴走が付く場合もあります。11月上旬からは、12月に実施する校内持久走大会に向け、小中高各学部で長距離走に取り組みます。持久走大会では、各自、個々に設定した目標タイムを目指して取り組みます。全盲の児童・生徒は、晴眼の教員が輪になったひもを使ってガイドしながら一緒に走ります。このひもを「伴走ひも」と言います。
走り幅跳びは、コーラーと呼ばれる人が音を出して、走る方向と跳ぶ位置を教えます。
【球技】
29年度、小学部においては、「キックベースボール」「グランドソフトボール」「フロアバレーボール」「サウンドテーブルテニス」の4種目に取り組みました。
中学部・高等部においては、「ゴールボール」や「ブラインドサッカー」にも取り組んでいます。弱視児も盲児もどちらも楽しめるようにルールを決めたり、同じ条件で体験したりするなどして行っています。例えばフロアバレーボールの前衛やサウンドテーブルテニス、ゴールボール等では、弱視の生徒もアイシェードを着用して、視力的に同じ条件で行います。また、キックベースボールでは、守りの位置を、盲児は前、弱視児は後ろ等というように決めています。球技では、競い合ったり、協力し合ったりする中で、様々なことを学んでいます。
【水泳】
夏季の期間には、普通校と同様に、水泳に取り組んでいます。全盲の児童は、特に水への抵抗があるので、水中でも安心できるように、水深1m程度の小プールで、けのびや顔つけ、水慣れ等をしてから大プールへ移動しています。
29年度は、オリンピック・パラリンピック授業の講師としてパラリンピックメダリストの木村敬一選手に来ていただき、泳ぐコツを丁寧に指導していただきました。
【器械体操】
小学部では、マット運動で、前転・後転・開脚後転・三点倒立・倒立前転など、通常校で行う技にも挑戦しています。導入段階として、様々な体の動かし方をサーキット運動の中で段階的に経験するようにしています。高等部になると、前転や後転などの基本的な技は、もちろんですが、生徒の運動能力に応じて、バク転やハンドスプリングなどに挑戦する場合もあります。指導する際に安全面の配慮等はもちろんですが、可能な範囲で普通学校と同じことを体験できるように取り組んでいます。
【リトミック】
重複学級の教育課程においては、年間を通して、年度当初から体の使い方をしっかりと身に付けられるように、音楽に合わせて楽しくリトミックを行っています。細かい手指の使い方から体全体を使った大きな運動まで様々な経験ができます。
【その他】
体幹を意識させるためにローラーブレイドを行ったり、小学部では縄跳びや鬼ごっこなどを行ったりする場合があります。